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闘いのワンダーランド #012
「I編集長の喫茶店トーク」

1975.02.04 大阪府立体育館
アントニオ猪木vsブルート・バーナード
1975.03.13 広島県立体育館
アントニオ猪木 vs タイガー・ジェット・シン

「セメントをやらせたら怖いバーナード」
「ベンガル虎に襲われたシン」

I編集長・井上義啓

(試合VTR前のトーク)

 前半が猪木とブルート・バーナードとの試合で、後半が猪木vsシンという。まあ猪木vsシンについては、試合が流れた後で色々話をします。まず、バーナードについてね、やっぱりちょっと話をさせてください。

 バーナードというのはね、これから見ていただくんですけれども、もう知ってる人は知ってるけどね。ツルツル頭でね、タコ坊主みたいな格好で、こう顎を突き出してね、こういう格好で歩くわけですよね。だから、何と言うのかな、猪木の好みには合わないタイプのレスラーですよ、これ。だからホント言うと猪木は闘いたくなかったんじゃないかと思いますよ。何も言いませんけどね。しかしね、これはね、我々マスコミもそうだし、一般のファンもそうだけどもね、バーナードというのは非常に誤解されてますよ。なんか、怪奇レスラーでね、たいして実力も無いのに「ウォウォッ」と吠えてね。たいした男じゃないといっとるけどね、この男ほどセメントマッチをやらせたら怖い男はいないんですよね。

 大木金太郎の耳を「バサーッ」と角材で落としたでしょ。これはね、たまたまねの、今だから言いますけど、アクシデントじゃないんですよ。これはね、控え室を出る時に「やってやる」と言って出ていったんですからね。だからね、みなさんね、アクシデントでたまたまああなったんだと、だからバーナードだからね、失礼だけどクレイジーファイトだからああなったと言ってますけどね、そうじゃないですよ。控え室の時からそういう話になっていて、ハッキリ言って「鉄砲玉」ですよ。「今日は大木を痛めつけてやる」とね、そういった形で出ていきましたからね。だから「やっぱりな」という印象でしたね、試合を見ててね。だからそういったね、非常に怖いレスラーがバーナードだということをまず頭においていただいて、見んことにはね。なんだあれタコ坊主の怪奇レスラー、今日のビデオというのは面白くもおかしくも無いじゃないかとね。そんなもん猪木の相手としてはミスキャストですよ、なんてことを言っちゃならんのですよ。

 返ってね、タイトルマッチなんかじゃなかったところが良いですよ。これがタイトルマッチにしたら見られんでしょうね、おそらく。だからああいった「無制限一本勝負」ぐらいがいいんですよね。オープンルールでね。この男はそういった男ですからね。シンだってそうだし。だからこの後やってる猪木vsシンにしたって、結局オープンルールでやった試合だと言う風な見方をしてもらったらいいですよ。そういったもんのほうがね、この二人には適してますしね。だからバーナードとの試合というのは、もう少しね、僕は、なんと言うのかね、猪木が血だるまにされる試合じゃないかと思ったんですけども、猪木がそこらへんをよく読んで、「クルッ」とかわしてますよ。バーナードのね。だからそういった点ではバーナードは肩透かしをくわされたんじゃないですか?そこらへんがね、よく出てると思いますよ。ただどこで肩透かしをくわしてね、どこで猪木が「スーッ」と逃げているかと。最後の決まり手というのも猪木らしい決まり手で勝っていますし。

(試合VTR後のトーク)

 これは凄い試合ですね。やっぱり猪木vsシンとなるとね、マンネリ化とかなんとか言われてましたけどもね。やっぱり(毎試合)舞台背景が違うでしょ、背負ってるものが。ですからね、同じ試合を繰り返してもね、僕らをのめり込んでいきましたよ。そういったところがね、シンの凄さですよ。シンというのはやっぱり、単なるクレイジーファイターじゃないと言うことね。プロレスも立派に出来るし、もういろんなことを読んで、こういう時はこうで、この時はこうだという役割をちゃんと心得ていると言うね。非常に頭のいい人ですよ、シンというのは。

 だからそういった意味でね、何回繰り返しても、シンとのNWF世界戦というのは14回やってるはずですよ。それがね、いずれも名勝負、とまではいかないけどね、つまらん駄作というのはひとつも無いですね、これ。だから14回繰り返しても、魅せたところにね、猪木が凄いんだろうけども、やっぱりシンがレスラーとしての基本というか、そういったものを「ピシッ」とわきまえているというか、身につけているというか、そういったレスラーだからということですね。

 (インタビュアー:シンがトラに噛まれたのは?)あの話はちょっと訂正があるんですけどね、たしか「右腕」と言うようなことを申し上げたと思うんですけど、後で調べてみたら、左肘なんですよ。肘のところね。当時の週刊ファイトなんかをひっくり返してみますと、ベンガル虎の牙で引っかけられたという、そういった話が出てますよ。これね、詳しい話をさせていただきますけどもね、8歳の時に父親と一緒に、これ、インドに住んでましたから、ハンティングに出ているんですよね。その時にベンガル虎に襲われてるんですよ。「ガーッ」とやられたんですね。シンの話だと半年ほどね、半年ほど高熱を出したまま生死の境をさまよったと言いますよ。だから、「タイガー」とリングネームをつけたと思うでしょ。そうじゃぁないんですよね。最初、16歳の時にインドで修行したのが、タイガー・ジョギンダーというね、これ、タイガー・ジョギンダーというのは、力道山時代に来たインドの名?、名レスラーでしょうね。この人のもとに弟子入りしてプロレスのイロハから教えてもらったと。

 だから師匠のリングネームをとって「タイガー」と付けたんだろう、というのでも無いんですよね。シンがそう言ってましたね。そうじゃないんだ。「じゃあ、虎に噛まれたから、虎にやられたからそういった名前を付けたのか」と聞いたら、「本当はそうでもない」と。本当はその方がいいんですね、そういうことがあったから、ベンガル虎にやられたんだから、こういった「タイガー」とリングネームを付けたんだ、伊達や酔狂で付けたんじゃ無い、といった話の方が面白いけども。本当はね、シンの話を聞いてみますと、「インドのレスラーはみんな“タイガー”と付けるんだ」と。タイガー・ジョッキンからとっただとか、そうじゃないんですね。インドと言ったら(強さの象徴が)“ベンガル虎”なんですね。だからインドのレスラーと言ったらみんな「タイガー」なんですよ。そう付ける。

 だからシンが言ってたのは、「初代の師匠よりも、私はフレッド・アトキンスのことを自分の師だと思っている」と。フレッド・アトキンスというのはジャイアント馬場も鍛えているしね。もの凄い 」ハードトレーニングなんですよ。だからシンは「何遍殺してやろうかと思ったか知れない」と言ってましたよ。「このやろう、こんなことをさせやがってって思ったけど、今になって思うとやっぱりこれがあったからこそ、今日のオレがある」と。そういった意味ではフレッド・アトキンスこそが師であるというね、そういった話は非常に面白いですね。僕はタイガー・ジョギンダーの方を上に置いて、と言う風に考えてましたよ。だからリングネームをもらったんだろうと。聞いてみたらそうじゃない。そこら辺の話っていうのが面白いなと思った記憶がありますね。うん。

闘いのワンダーランド #001-#050

 

 

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 出典:https://www.wikiwand.com/en/Tiger_Joginder_Singh

 

 

 

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