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闘いのワンダーランド #018
「I編集長の喫茶店トーク」

1975.12.11 蔵前国技館
アントニオ猪木 vs ビル・ロビンソン(1)

「力道山十三回忌追善特別大試合」

I編集長・井上義啓

 猪木vsロビンソン戦というのはね、一回しか行われなかった名勝負なんですよね。2回も3回も行われなかったところが、私にすれば非常に価値があると。で、これが行われた時代背景と言うか、舞台装置と言うか、そういったものを分かってもらわないとこの試合の本当の意味での理解者にはなれないですよ。これは50年の12月17日に行われた試合なんですよね。ところがこの日、全日系のプロモーターが全部集まりまして、力道山追善興行(力道山十三回忌追善特別大試合)というのを打ってるんですよ、日本武道館で。これは十三回忌のね。これが日本武道館で行われている全日系の試合で、こちら側は猪木vsロビンソン戦だというね、同日興行なんですよね、場所は離れているけども。非常に話題になった試合なんですよ。なぜその時に恵子未亡人あたりが猪木は非常に義理をわきまえていないと、なんで力道山追善興行の方に出てこないんだというね、だからもう猪木を力道山の弟子とは認めないというふうなね、ことを新聞発表などで堂々とやったんだよね。しかし、これ、そこだけを知っておられるファンの方はね、やっぱり猪木っていうのはちょっとおかしい、となるんですよこれ。

 そうじゃないんですよね。やっぱり、猪木vsロビンソン戦のほうが先に決まったんですよ、これ。後から日本武道館の追善興行のほうが割り込んできましたからね、これをね、いまさら変えろという訳にはいかないんですよね。だからそこらへんをね、ハッキリ認識してもらわないと、一方的に全日さんのほうが上げたアドバルーンだけを活字なんかで読みますとね、なんか猪木はダメだという事になっちゃうんですよね。だから、そこらへんをまずね、頭に置いておいていただきたいというのが私からのお願いですね。

 

 明日ね、この後半が流れるわけでしょ。そこでまあ詳しいお話はしますけどね。前半を観てもらっただけでもお分かりになると思いますけども、猪木が「柔」で他のレスラーが「剛」という、今までのような価値がこの試合は逆転してますよね。猪木がどちらかというと「宮本武蔵」でね、ロビンソンのほうが「佐々木小次郎」という非常にきわだって逆転したアレを演じた唯一の試合ですよね、これ。今まで(「巌流島の決闘」と言われた)猪木vs小林戦にしても、本当に巌流島でやりました猪木vs斎藤の試合にしても、世間の人たちは「どっちが武蔵なんだと、どちらが小次郎なんだ」という、それはもちろん勝った方が「武蔵」なんだけれども。そうすると勝った方は猪木じゃ無いかと、だから猪木が武蔵じゃないかというような、当時からそういったつまらん話をしてましたよね。

 それは全然ミスキャストですよ。どう考えてもね、役割から言ってもね、顔立ちから言っても、雰囲気から言っても、猪木の方が「小次郎」ですよ。そこら辺でね、「巌流島の決闘」を「どっちが武蔵だ、小次郎だ」というのは、つまらん話になっちゃうんですよね。だから僕はそういったことには乗らなかったんですよ、初めからミスキャストだと言うことでね。だけどこの試合を誰も「巌流島の決闘」とは言わないけども、ハッキリ言って猪木がキッチリ「武蔵」を演じた試合だなという、非常にユニークな試合ですね。

 なぜかと言いますと、これは明日申し上げますけどね。やっぱり技のキレ、と言いますかね、仕掛けの瞬発力というのはロビンソンの方が遥に上なんですよ。これ、猪木が怒るだろうけどね、それは明日ホントの意味でのお話はします。前半を見ていただいて分かると思うんですけども、とっかかりというのはロビンソンのほうが遥に上ですよね。猪木はもう、なすがままに投げられたりね、バックを取られたり、そこら辺のところがなぜあったかというと、「ビリーライレージム」でナンバーワンの男ですからね。

 これはさすがに猪木もね、あの仕掛けの瞬発力には勝てませんでしたね。だからハッキリ言って先制攻撃を仕掛けていったのはロビンソンですよね。だから猪木としては受けるしか無かったし、パワーファイトで応対するしか無かったというね。そこら辺が前半を観てもらったところでね、非常にチグハグなんだけれども、出ちゃってると思いますね。

 ただ、名勝負には違いないんだけれども、猪木vsゴッチ戦に比べると、僕は感覚的に「違う」と思うし、僕の目から言うと猪木vsゴッチ戦の方に軍配を上げたいですね。まあ、ロビンソンのファンの人たちは見方が違うでしょう。見方が違っていいんですよ。プロレスというのは見る立場によって、違いますからね。僕はやっぱり猪木vsゴッチの方をどちらかというと上に置くしね。ある人は猪木vsロビンソン戦の方だと言うし、それはそれでいいんです。ただ前半戦を観てもらうと分かるように、非常に華麗な試合なので、そういった意味では重々しさにちょっと欠けるところがあるんですよ。



 



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