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闘いのワンダーランド #105
「I編集長の喫茶店トーク」

1981.06.08 ニューヨークMSG
キラー・力ーン vs ダスティ・ローデス
WWF世界タッグ選手権試合
ムーンドッグス vs 藤波辰巳&谷津嘉章

「長い間ありがとうございました。またお逢いする日まで。井上義啓」

I編集長・井上義啓

 えー、今日のお話はですね、キラー・カーンについての話です。この年(昭和56年)にですね、アンドレに関するビッグニュースが発生しますね、これ。もう、プロレスに通じておられるあなたは、「ピーン」と来るはずですね、これ。キラー・カーンがアンドレの左足をへし折ってしまうんです。(1981年)5月2日の話なんですけどね、これ。ニューヨーク州ロゼスターのウオー・メモリアル・ホールというところで、キラー・カーンがアンドレの左足をへし折ってしまう。この話を中心に時間が来るまでお話します。

 この第4回MSGシリーズというのが、5月8日に川崎で開幕します。これはまあ、5月8日と言ったら「川崎」とこの年のね。何だと行ったら、ブッチャーが出てきて、新日本プロレスに 籍を付ける日なんですね。記念すべき日というか、忘れられない日なんですね、これ。で、その第4回MSGシリーズの前日にですね、例によってと言いますか、新宿の京王プラザでですね、ま、当時はみんな京王プラザだった、京王プラザで前夜祭が行われるわけですね。第4回大会の。で当然MSGシリーズですから、御大のビンス・マクマホンもやって来ますわ、これ。で、挨拶に立ったと。冒頭にですね、「ここにお集まりの皆さんには非常に申し訳ないけれど、BADニュースがある。と言いますのは、アンドレとトニー・アトラス、このシリーズに参加する予定だったアンドレとトニー・アトラスが都合があって、参加できません」と。「エーッ?」ということになったんですね、これ。で、(マクマホンは)「トニー・アトラスはボディビルダーになるんじゃないですか」と。これはぜんぜん違うんですね、嘘っぱちとは言いませんけど、全然違う。

 「アンドレは5月2日の試合で日本人レスラーであるキラー・カーンに左足を折られてしまって、今、入院してます。ですから、アンドレは5月4日の定期戦にも出られなかったんです。そういった大変な事態になってるんです。その詳しい話は私は知りませんので、みなさん、病院に問い合わせて聞いてください」と言うような事をマクマホンが壇上で話をするんですよ。

 無論、トニー・アトラスが来られなかったというのは、これはもう、察しがつくかも知れませんけども、ジム・バーネットが当時のプロモーターですから、トニー・アトラスを握ってるわけでしょ、ジム・バーネットはNWAの大ボスですからね。メガネかけた白髪の紳士ですよ。当然、全日本プロレスと結んでます。「そんな話ばっかりするな」とまた怒られるかもしれないけどね。ですから、全日本プロレスと結んでいるジム・バーネットが、「たとえ、ビンス・マクマホンのところにブッキングした自分の所属選手をですね、トニー・アトラスといえどもオポジションの新日本プロレスに出すのはどうかな」ということでトニー・アトラスにそんな話をするんですよね。しかし、そんな話をしたって、本当はダメなんですよ。ブッキングしているのがね、ビンス・マクマホンであれば、ジム・バーネットであろうが、ジム・クロケット・ジュニアであろうが、そんな事は関係ないですよね、これ。ブッキングしているビンス・マクマホンが「新日に行きなさい」と言ったら、それでおしまいなんです。ところがそういったことを御大のバーネットから言われるわけですからね、トニー・アトラスが迷ってしまって、結局日本遠征をキャンセルするわけですよね。当然ペナルティが待ってますよ。トニー・アトラスは当分、ニューヨークから追放されてしまったんですね。そういったペナルティが来るわけですけど、とにかく、まあ、そういった事でトニー・アトラスは来られなくなった。

 残念ながら私はアンドレのことは知らなかったんですよ。東スポさんあたりは知っとったんじゃないですか。だけどもニュースとして流れなかったんですよ、これはね。私はそれを聞いてビックリした。「エーッ」と言うことになってきて、アンドレが来ないということは知ってたんですけどね、そういうことだったのか、ということだったんですね。その話をこれから詳しくさせていただこうかということですね。

 このキラー・カーンに何日か経って、2週間ぐらいですかね、それくらい経って、特派員にインタビューをしてもらったんですよ。真相はやっぱり、キラー・カーンじゃないとわかりませんからね。その時のキラー・カーンの話というのをお話しようと。

 キラー・カーンはアンドレの左足をロープに引っ掛けておいて、トップロープからヒップアタックで「バーン」と行ったんですね、これ。それで、「グシャ」という変な感じがして、「これは折れたな」と思ったんです。カーンは。「折れたな」ということはわかったんです。で、その次の瞬間にですね、アンドレはリング下にエスケープしてですね、足を引きずりながら、顔をしかめてリングの周囲を2回半ほど回ったというんですね。その時のアンドレの様子を見ていたフレッド・ブラッシーが、フレッド・ブラッシーというのはキラー・カーンのマネージャーだったんですね、これ、モンゴリアンだということでね、ごまかしてましたけど、マネージャーだったフレッド・ブラッシーが、「これはこのままリングアウト勝ちでキラー・カーンの右手が上がると、どういうことになるかわからない」と。ファンも、ファンと言いますか、観客ももう、ざわめいていましたからね。だから、こんなことをやったらですね、ヒールは袋叩きの目に合うんですよ。当時のね、アメリカの青い目のファンからのヒールの憎まれようと言ったらね、凄いものだったですからね。日本でもヒールは憎まれますけども、向こうではハッキリ言ってジャックナイフで殺られてしまうんですね。

 ですから、レフト・フック・デイトンにしたって(グレート・カブキ?)、グレート小鹿にしたってもう、帰ってきた時にすごい目をしていましたよ。現在の「大日本プロレス」の御大ですけどね、グレート小鹿は。あの人がアメリカ遠征から帰ってきた時には、すごい殺気をして対応してましたよ。そりゃもう、言ってましたよ「もう、ホテルに帰っても安閑として眠れない。いつファンが押しかけてきて、コノヤロウ、ってね「ガーッ」と殺られる(刺される)かわからない。だから、「コンコン」とノックされても絶対に出ない」と。ヒールはそういう凄まじい闘いを毎日毎日やってきたんですよ。ブラッシーにしたって、キラー・カーンにしたって、それを知ってますからね。だから、ベビーフェイスの長たるアンドレの左足をへし折ったということになったら、何をやられるかわからないというんで、ブラッシーが何回も目配せをしたと言うんですね。そりゃもう、リング上でこんなことをして、手を上げてる場合じゃないですよ。もう、一目散に控え室に逃げ帰ったと言うんですよ、これ。そういう話をしてましたよ。で、そのあとギャラがいっぺんに上がったんだと、カーンがね、笑いながら言っとったけれども、いっぺんにギャラが上がった。それはノースカロライナとかね、ロサンゼルスとかそういったところから問い合わせと言うか、「試合に出てくれ」というのが、もうひっきりなしに来たらしい。その大半は、「もう、何ヶ月先でも良いから」と。アンドレは今病院に入院してるんですからね、「半年後でもいい、極端に言えば、1年後でもいいから、アンドレとリベンジマッチをやってほしい」と、自分がプロモートする試合で。

 だからカーンはいっぺんにその、ビッグレスラーにのし上がってしまったんですよ。そいいうことがあったんですけど、アンドレはこれは大変ですよね。2日後の5月4日にMSG定期戦というのを控えてるわけですからね。これがパーですよ、まず。そして、次の6月の定期戦ですね、これ。これも6月8日ですから、これもパーなんですよね、これ。6月の定期戦の時はなんとか松葉杖をついて出てきたんです。ですけど、足を折っただけで、内臓疾患じゃないわけですから、病院でどんなに看護婦さんあたりが「あーだ、こーだ」と言ってもきかないんですよ。で、毎日毎日20本ぐらいのビールを飲むわけですよね、毎日。そして、500キロ(5キロ?)もあるようなこんなでっかいステーキをね、3枚も4枚も「ペロッ」と食うわけですよ、一食で。一食で食うということは、3回で10枚から20枚食うわけでしょ。こんなでっかい500キロ(5キロ?)もあるような、そりゃ、太りますよ。ですから(体重が)260キロ超えたんですね。これは当時は270キロまで行っただろうと言ってるんですよね。そんな「ブクブク、ブクブク」太ったですね、アンドレが出てきたんですよね、これ。

 そしてその時に定期戦で試合に出られないですから、例によってインタビューを受けて、わめいて、(マイクパフォーマンスで)こうやってるわけですよね。「7月20日のMSG定期戦を見ておれ。次の定期戦でオレがキラー・カーンの足を、オレがキラー・カーンの足をへし折ってやる。片足だけじゃない、両足だ。両足をへし折ってやる。だから、キラー・カーンに今持っているこの松葉杖を「4本」プレゼントしてやる」と。これはおかしいですね、これ。アンドレは一本足をへし折られて、二本の松葉杖が要るんだから、両足をへし折るということは、四本要るんだと単純な計算をしたんですね、これ。ですからその時のインタビューで「四本の松葉杖を送ってやる」とね。四本送られたってしょうが無いんですよ、これ。ですから、そんなことを言っている。

 正直言って7月20日のMSG定期戦を盛り上げるだけの話なんですけど、その中で私が「なるほど」と思ったのは、アンドレの言葉の中にですね、「レスラーの足を折るということが、どういうことなのか、どういう意味なのかをキラー・カーンに嫌というほど教えてやる」と。これが真実の言葉ですよ。だから私がアンダーラインを引いたのはそこなんですよ、アンダーラインを引いたのは。これですよ。レスラーの足をへし折るということ、これがね、どういうことかということでね、私はその言葉にアンダーラインを引いたんですよね。だから、まあ、そういったアンドレの足折りということを中心にお話をしました。

 ところでですね、今日4月30日を持ちまして、この「喫茶店トーク」というのは、一応一時中止と。と言いますのは、まあ、この、SAMURAIテレビ局のほうがですね、6月から、大々的に番組を改変して行くんですね。もう、リフレッシュして打って出ると。まあ、百貨店で例えますと、まあ増改築、増築しまして、そして記念のリフレッシュオープンというようなことをやるわけでしょ、だから、6月からそういったことをやるので、5月いっぱいは、まあ充電期間だということで、私はまあ、少なくともこの期間だけは、まあこのトークを中止させていただくということで、非常に残念なんですけども、今日をもってひとまずお別れと言う形で、またいつかお目にかかりましょう。どうも長い間、拙いトークを聞いていただきまして、ありがとうございました。

(TW:長い間ありがとうございました。またお逢いする日まで。井上義啓)

 



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コーヒーイメージ2

 この放送以降、2006年に他界されるまで、SAMURAI!の「闘いのワンダーランド」に再登板することはありませんでした。早いもので2018年は十三回忌です。この「I編集長の喫茶店トーク」掲載が故井上義啓氏の「十三回忌追善大企画」となれば幸いです。

 

 

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