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「評伝 モハメド・アリ」を読む(2024/1/28更新)

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 ■「評伝 モハメド・アリ」
Inoki_Ali
 岩波書店発行 ジョナサン・アイグ著 押野素子訳 

 2022年9月に発売されていた「評伝 モハメド・アリ」を読みました。。全600ページのこの分厚い本には、アリの生涯が詳細に描かれています。生い立ちから、オリンピック出場、プロボクサー世界チャンピオン時代、引退後の活動、モハメド・アリの生きざまは大変興味深く読めます。

 しかし、このサイトで紹介するとなると、1976年6月25日(現地時間)のアントニオ猪木戦がどのように描かれているのか、と言うことでしょう。一部を抜粋して紹介します。

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「評伝 モハメド・アリ」より一部抜粋

 猪木との試合は(これを「試合」と呼べるのであれば・・・)ハーバートのアイディアだった。日本のプロモーターは、ボクシング・チャンピオンとレスリング・チャンピオンをリングで対決させようと、アリに6OO万ドルを約束した。しかし、試合が近づいても、筋書が用意されるのか、穏やかなエキシピシヨン・マッチを行なうのか、ボクシングとレスリングを融合したルールの下で真剣勝負をするのか、わかっている者はいないようだつた。

 ■日本武道館のチケット
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 一番安い1万円のチケットが一番カッコいい

 6月25日の試合に向けて、1万4千人を収容する日本武道館のチケットは完売した。アメリカでは、ニューヨークのシエイスタジアムでクローズドサーキット放送を観覧するために、3万3千人近くが10ドルを支払った。同会場では、ボクサーのチャック・ウエプナーとプロレスラーのアンドレ・ザ・ジャイアントの試合も生中継される予定だった。

 ■シエイスタジアム
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 https://sabr.org/bioproj/park/shea-stadium-new-york/

 常に自己宣伝の名人だったアリは、自分がこれまでに出場したどの試合よりもこの対戦は多くの視聴者を集めるだろう、とインタビュアーに語った。また、本気の勝負になる、血みどろになるかもしれない、と請け合った。

 ■モハメド・アリ
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 世界最強の男「猪木vsアリ」(アサヒ芸能増刊号)より

 試合が近づくにつれ、猪木が正当に闘って勝つことを望んでいることが明らかになり、アリのチームは猪木がアリに身体的な危害を加えないよう、一連のルールを提案した。アリは4オンス(約110グラム)の薄手のグローブを着用し、猪木は素手で試合をする。膝蹴りや、腰より下の殴打禁止。フアイターが寝そべっているときや、膝をついているときにはパンチ禁止。キックは片膝をマットにつけた状態でのみ許される。こうしたルールは、試合前に公表されなかった。一般に公表されていれば、誰も金を払って試合を観ょうとは思わなかったはずだ。格闘技というよりも、ツイスターゲーム〔指示板のルーレットを回し、指示に従って手足をプレイシートの印の上に置くゲーム。バランスを崩して倒れたら負け〕に近かったのだから。

 ■ツイスターゲーム
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 https://www.toysrus.co.jp/ より

 試合が始まった。猪木はリングを横切り、アリに向かって足から突っ込んだ。足を使ってタックルを試みたわけだ。タックルは失敗したが、猪木は再度試み、また失敗した。猪木は立ち上がらず、仰向けになったまま、カニのように動き回って時折アリに足を出し、膝の後ろから足を引っかけて倒そうとした。アリには拳で闘うという選択肢しかないことを、猪木はわかっていた。彼が寝そべっている限り、アリはパンチを出すことができない。猪木が仰向けのままキックを出すあいだ、アリはまるで蛇を踏みつけるかのように跳ね回っていた

 ■猪木-アリ状態
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 別冊ゴング七月号増刊 猪木vsアリ完全詳報 より

 どのラウンドでも、猪木は仰向けになり、アリのふくらはぎや太腿を蹴ろうとした。第4ラウンド、アリは恐怖の叫び声を上げながらロープに足を浮かせた。第6ラウンド、アリは猪木の足先を掴もうとしたが、猪木はこれを逆手に取ると、もう片方の脚をアリのふくらはぎに巻きつけ、アリはマット上に尻もちをついた。その夜、初めてのテイク、ダウンだ。猪木はすぐさまアリの胸の上に乗り、アリの顔の上にかがみ込んだ。
 6OO万ドルのために、人はどれほどの屈辱に耐えるのだろうか? アリは身をもってその答えを示していた。なお猪木のテイク、ダウンが、この試合で最高のアクションとなった。

 ■第6ラウンドの攻防
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 別冊ゴング七月号増刊 猪木vsアリ完全詳報 より

 アリは猪木をからかいながら、立ち上がって闘えと言った。「ワン・パンチ! 一発打ってみろ!」と彼は叫んだ。パンチされたくない猪木は、立ち上がろうとしなかった。やがて、アリの両脚は腫れ、出血し始めた。アリの脚がこれ以上傷つかないよう、猪木のシューズのつま先をテープで巻いてほしい、とアンジエロ・ダンディーは強く求めた。

 ■インターバル
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 別冊ゴング七月号増刊 猪木vsアリ完全詳報 より

 枕投げですら、もっとドラマチックな展開になっただろう。アリはこの試合で、効果のないパンチを6発出しただけだった。「パンチ一発につき1OO万ドル」と後に彼は自慢している。しかし実際には、さらに割が良かった。アリが出したパンチで、命中したのはわずか2発。つまり、パンチ一発につき3OO万ドルを稼いだというわけだ。より正確に言えば、試合が期待どおりの収益を上げていれば、パンチ一発につき2OO万ドルを稼げていたはずだった。

 ■パンチ一発300万ドル
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 NEWプロレスアルバム2 アントニオ猪木格闘技世界一決定戦 より

 ファンからはプーイングが起こり、リングにはゴミが投げ込まれた。審判が引き分けを宣言すると、観客はさらに憤慨して怒鳴った。アリにとって、この試合は屈辱以上のものとなった。フアーディ・パチェコは腫れ上がったアリの脚を診察すると、数日間の安静を勧めた。しかし翌日、アリは韓国に飛び、ソウルで米兵向けにエキシビション・マッチを行った。アメリカに帰国する頃には脚に血栓ができており、アリは数週間の入院を余儀なくされた。
 さらに後日、アリは猪木側に訴えられた。土壇場でのルール変更のせいできちんと闘うことができず、チケット売上が減少した、と申し立てられたのだ・・・・

 ■試合終了
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 NEWプロレスアルバム2 アントニオ猪木格闘技世界一決定戦 より

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 本文中にこれを「試合」と呼べるのであれば・・・という注釈を入れながらも、他のボクシングの試合と並んで評伝の中に取り上げられているのは、やはりアリの生涯において無視できない試合(イベント)だったのでしょう。「枕投げですら、もっとドラマチックな展開になった」という見方は残念ですが、それでも、この試合がしっかりと書かれていることは、猪木ファンとしては嬉しい限りです。

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